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尼僧が言う。「私たちの仕事は不幸な方のために働くことです。だからこの世から不幸な人が
いなくなったら私たちの仕事はなくなってしまうので、顧客としてとっておくことが大事です。わか
りましたね?」
――桐島いつみ『まっかな人間像』、第1巻より。このネタは、意外に深い内容を含んでいる。
たいていの宗教団体、自助グループは、会員数増加に努め、あるいはメンバの多さを誇り、退
会者に対して純真でない。これは何を意味しているか?
「信じる者は救われる」と仮定しよう。「救い」というものが完了するなら、救われた者は、もは
やそこにいる必要がない。すなわち信者である必要は、なくなる。
救いを完了できないなら、その団体は「看板に偽りあり」で、時に有害ですらあろう。図式的に
いえば、相手が救済され独立し、去ってゆくことを、救済団体は喜ぶべきなのだが。
この問題の本質は「大乗」が可能なのか、ということである(「妖精の国からのお知らせ」付録
参照)。
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