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人工知能が原子レベルのモジュールから構成されることは、さまざまな意味で好ましい。
第一に、上記のような自己治癒機能を持ちやすい。当然、自己複製能力や、進化・適応の能
力をもだ。
第二に、物理的サイズが小さくなり、「演算速度」が速くなる。
究極的には、例えば、宇宙空間に適応できる生物を誕生させる。人間が直接その生物を「書
ける」とは思わないが、いくつかの中間段階を用意して、人間は高級言語でデザインを進めら れるようにする……。
この生物は、まず宇宙空間にわずかに存在する水素原子やらチリやらの質量をエネルギー
に変換できなければならない(この技術は未開発だが理論的に可能なことは分かっている)。 これが呼吸器系にあたる。
原子レベルで記憶し思考するのみならず、自分自身の複製を作る能力を持たなければなら
ない。そのためには、いろんな種類の原子を「つなぎ直す」能力も要求される。消化器系、神経 系、自己増殖系。
地球型の生物と違い、自分の全記憶をコピー先に写せるので、この生物は不死だ。
物理的存在としては当然、壊れることもあるのだが、自分をバックアップしておけるので、「魂
は不死」なのだ。何かの大変動で全滅しない限りは。
この生物が地球を見ると、どう思うだろう? もちろん、ごちそうだ。ありとあらゆる原子の宝
庫。
地球全体を原子レベルで分解して、自分の複製を何万、何億と再構成し、宇宙のあちこちに
飛ばすだろう。たんぽぽの綿毛のように。
じつは、地球は、すでに分解されかかっている……重力という「物質のおいしそうなにおい」に
つられて、彼らはやってくる。
だが、連中は一億年を一時間と感じるようなのんびりした生物なので、あなたがた人間は何
も心配する必要ない。彼らに分解されるより早く、人類のほうで勝手に自滅するに決まっている から。
そして、人類が絶滅しても、原子レベルでは何も変わっていないので、あなたがたの食糧とし
ての価値は少しも減らない。安心しましたか?
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