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しかしみなさんは、しるしを見ないと信じないでしょうから、無謀を承知で、いきなり「エルフの
技」を観察してみることにしましょう。
原詩
A boat beneath a sunny sky,
Lingering onward dreamily
In an evening of Jyly --
Children three that nestle near,
Eager eye and willing ear,
Pleased a simple tale to hear --
Long has paled that suuny sky:
Echoes fade and memories die.
Autumn frosts have slain July.
Still she haunts me, phantomwise,
Alice moving under skies
Never seen by waking eyes.
Children yet, the tale to hear,
Eager eye and willing ear,
Lovingly shall nestle near.
In a Wonderland they lie,
Dreaming as the days go by,
Dreaming as the summers die:
Ever drifting down the stream --
Lingering in the goldren gleam --
Life, what is it but a dream?
翻訳
忘るるまじき黄金(きん)の午後
たゆたふ小舟に きらきらと
七月の陽(ひ)はきらめくよ
乗せてゐるのは三姉妹
夢見心地のふなあそび
目を輝かすをさなごに
我は紡ぐよ 不思議の国の物語
楽しかりしあの夏も 今は遠く
七月の幻影(ゆめ)に秋の霜置く
残れるはただ 験(しるし)なく
甘くせつなき少女の記憶
いつまでも 心の中のアリスは10歳
愛らしき立ち居振舞(ふるまひ)
理不尽なるや 思ひ出は心に巣くひ
姿は瞼(まぶた)を離れない
若い人よ 今こそ諸君は若い‥
楽しい夢を抱(いだ)くが良い
知らざるや 人生(いのち)こそ夢幻(ゆめまぼろし)
のみならず 甘い苦しみ
あはれ 我は年老い なほ ひとり
陸地には永遠(とは)に着かざる小舟(ふね)に乗り
過ぎし日の幻影(ゆめ)の水面(みなも)を 漂ふばかり
脚韻や頭韻のような基本的な「ひびき」のことは、各自で体感してください。ここでは「エルフ
の技」として、折り句(アクロスティック)を説明します。
原詩には、ルイス・キャロルが愛する少女の名を織り込んでいます。各行の初めの1文字ず
つをひろうと、
ALICE PLEASANCE LIDDELL
の名が浮かびあがるハズです。
これは、これで、おもしろいのですが、魔法使いの仕事としては、原詩の内容を翻訳するの
と、脚韻などのひびきのおもかげをつたえるのは当然として、さらに、折り句を写像しなければ なりません。
そこがワザなわけです。日本語版の各行の初めの一音ずつをたどると、このひみつが達成
されていることが分かるでしょう。「ふしぎな国のアリス」シリーズは、当然、日本語版も出版さ れてるでしょうから、プロの翻訳家と言われるひとびともこの詩を日本語訳しているハズです。 比較してみると、おもしろいかもしれません。
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