裸の王様


(幕が上がると闇、何も見えない。声がする――)

軍産大臣:王様、これはグローバリゼーションという貴重なる生地で仕立てた高価なお服。繊  
       細にして玲瓏、高貴にして玄妙、愚者には不可視という特性を持っております。聡明
       なる王様におかれましては、よもやこれが見えないということは、ありますまい。

王様:ううむ。

軍産大臣:して、このお服を身につけなさると、あのあたりに大いなる正義と愛を施したくもおな
       りでしょう。愚者には生起せぬ現象ですが。

王様:さもあろう、さもあろう。正義と愛は余の宗(むね)とするところ。これ臣民たちよ、遠き者
    は音に聞け、近き者は目にも見よ、余は壮大なる正義の大事業に着手するぞよ。このた
    えなる服の輝きがそちらにも分かろう! 余の臣下に、グローバリゼーションが見えぬ馬
    鹿者はおるまいて。

臣民A:ははあ、なんと素晴らしいお服。生地の糸の一本一本、一針一針が正義の筋道に貫 
     かれておりまする。

臣民B:おお、なんという栄誉! 神が我が国を祝福したまわんことを! さっそく衛星放送で 
     属国の民らにもこの良き知らせを伝えねば。

(突然、明かりがつき、音楽が流れる。舞台上、サルの面つけた人物たちが全裸でしゃちこば
ってソーシャルダンスを踊っている。)♪闇の砂漠に産婆乳母、金のメッキの桃源郷〜


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